LAを舞台にしたcoming-of-age(年頃の子どもが成長する過程がメインテーマになった物語のジャンル)フィルム、"mid90s"。タイトルどおり1990年代を背景に4:3の画面を使うなど、その時代の匂いを撒き散らしているこの映画は俳優ジョナ・ヒルの監督デビュー作。
マネーボールとかウルフ・オブ・ウォールストリートにも、結構目立つ役で出ているあの人です。まぁ憶えてる人はあまりいないかもですけど。
で、思春期のアイデンティティや周囲の人間たちとの帰属意識なんかがテーマなんですが、ストーリーが進むにつれて、画面の中の人間関係がどんどんこじれていくのを見せられます。
グループのリーダー的存在だったFuckshitは不安定で自己破壊的になっていき、主人公スティーヴィーの指導役であるレイはスケート以外での個人的な葛藤や責任を背負いこむ。そしてスティーヴィーと家族の関係も緊迫し、兄であるイアンとの殴り合いに発展するという。
最終的にいまいちスッキリしないところがリアルなんですが、それぞれに思うところは違うんだから各々で考えて感じてください…って感じでしょうか。
ミッドナインティーズ《Mid90s》の、あらすじ|1990年代、仲間たちの日々を綴った映像の記録
O157騒動で菅さんがカイワレを一気食いしたり、スターバックス日本1号店や新宿高島屋がオープンした1996年の話。
13歳のスティーヴィーは、LAのパームスで兄のイアン、シングルマザーのダブニーと暮らしている。ある日、自転車でMotor Avenue Skateshopの前を通りかかったスティーヴィーは、外にいるスケーターたちの仲間意識に興味を持ち翌日もやって来た。
兄とスケートボードを交換しショップに持ち込んだスティーヴィーは、若いスケーターのルーベンと出会い、カリスマ的リーダーのレイ、口下手な "ファックシット"、無口な "フォースグレード"といった他の仲間を紹介してもらう。スティーヴィーは "サンバーン(Sunburn、日焼けの意)"というあだ名をつけられ、グループに受け入れられる。
ある日、仲間たちと2つの屋根の間を飛び越えるスケートボードトリック(技的なやつ)に挑戦していたスティーヴィーは、転倒して頭に怪我をする。母のダブニーは彼の無謀な行動と新しい友人について心配するが、スティーヴィーはすでに仲間に溶け込んでいた。
兄のイアンもストリートで偶然会ったファックシットとぶつかり言い合いになるが、仲間たちに威圧され退却。そんな兄からこれまで殴られ続けてきたスティーヴィーは、兄を下に見始め、タバコ、酒、マリファナを始める。さらに調子に乗って、あるパーティーでエスティーという名の少女と初体験まで達成する。
スティーヴィーは酔って帰宅した翌日、母ダブニーから少年たちと付き合うことを禁じられる。母や兄がすっかり鬱陶しくなったスティーヴィーは、スケートショップの裏で一人落ち込んでしまう。そんなスティーヴィーに、レイは「自分の人生が最悪だなどと思っていても、他の少年たちはもっと悪いのだ」と言って慰める。実際、フォースグレイドは靴下も買えないほど貧乏だし、ルーベンの母親は薬物中毒で、レイは弟を交通事故で亡くしていた。
店の裏で開催したパーティーで、スケートで成功したいレイはスポンサー候補として2人のプロに声をかけるが、酔ったファックシットはプロの前で恥をかかせレイのチャンスを潰そうとする。さらにスティーヴィーも、酔っぱらってルーベンと乱闘騒ぎを起こす。レイは友人たちの規律を欠いた行動に落胆し、みんなを家に帰そうとする。
しかし完全に酔ったファックシットは、別のパーティーへ行こうと皆を乗せて車を走らせ、途中で横転させてしまう。そして同乗していたスティーヴィーは意識を失い病院へ運ばれる。
その後、病院のベッドで目を覚ましたスティーヴィーは、並んで椅子に座っている兄のイアンを見る。イアンは、スティーヴィーを慰めるためにオレンジジュースの入った容器を渡す。病院に来た母のダブニーは、待合室で眠っているスティーヴィーの友人たちを見かけ病室を訪れるように勧める。
そして集まった仲間たちに対し、フォースグレイドが「見せたいものがある」と言う。彼はカメラをテレビにつなぎ、仲間たちの日常を撮影したビデオを再生する。
フォースグレイドはこの映像のタイトルを「Mid90s」とした。
ミッドナインティーズ《Mid90s》の、観る前に知っておきたい知識と見どころ|子どもたちの苦しみも理解したい
90年代のカルチャーをおもしろいと思える人
まぁ、万人にはオススメしにくい映画かも。
90年代のカルチャーをおもしろいと思える人や、その空気感を味わいたい懐古厨、少年というバカな時期を理解できる人に、自分が作ったわけじゃないけど捧げたい。
母親に対する兄貴のイライラは弟に向けられ、弟は居場所を求めて外で似たような仲間と付き合い始める。子どもたちの一見ネガティブな考えや行動も、その根っこには本当に望んでいるポジティブな想いが隠れているのではないかと。
そもそも、人は互いに迷惑をかけ合って生きていくもんですしね。
90s感を演出する小道具たち
とにかく小道具で90s感を演出しています。
- 初代プレステのコントローラーとミニコンポ
- LAなのにフィリーズのキャップ
- ストIIのTシャツにエアジョーダン
- ヒップホップ誌「The Source」
- カセットテープ
- MOBB DEEPやウータンのポスター、NasのTシャツ(LAの話だけど、なぜか東のラッパーばかり)
- BGMはBAD BRAINS、ファーサイド
警察官全般を指す俗語である「Five-O(5-0)」という言葉
なお警察官全般を指す俗語である「Five-O(5-0)」という言葉は、アメリカで70年代に人気のあったテレビドラマ「Hawaii Five-O」に由来するらしいです。
ハワイで犯罪と戦う警察官チームが主役の、この番組は2010年にもリブート版として放送されていました。
ミッドナインティーズ《Mid90s》の、キャストと予告編|Cast and Trailer
◎1h25m (2018)
- スティーヴィー/aka サンバーン(主人公):サニー・スリッチ
- レイ(リーダー格でドレッドの少年):ネイケル・スミス
- ファックシット(髪が長くてニットキャップをかぶっている):オラン・プレナット
- イアン(弟を虐待している兄):ルーカス・ヘッジズ
- ダブニー(イアンとスティーヴィーの母):キャサリン・ウォーターストン
- ルーベン(年少の仲間):ジオ・ガルシア
- フォースグレード(仲間の映像を記録する):ライダー・マクローリン
- エスティー(スティーヴィーの初めての相手):アレクサ・デミー