本作はLGBTQの活動家であるガラード・コンリーの手記を原作とした、2018年の映画。つまり本当にあった話がもとになっています。
2012年まで実在したLove in Action (LIA)とかいう、同性愛の子どもたちを矯正するための施設が舞台。まぁ、そのことを問題視するのは主に親をはじめとした大人たちなんですよね。性的な[罪]を犯したとか言われて子どもたちを追い詰めるという、とにかく怖ろしい施設です。
アーカンソー州の小さい町で、牧師の家に生まれたジャレッド。両親は彼がゲイであることを知り、心配になって教会が支援するラブ・イン・アクションに彼を登録させます。
施設でジャレッドは他の参加者と交友関係を築きますが、その中にはセラピーによって深刻なトラウマを抱えることになる人も。彼らの苦悩を通してジャレッドは、このセラピーの倫理に疑問を持ち始めるという話。
ラストにさらっと述べられるが、このチーフセラピストのモデルになった人物の現在の状況にビックリしたわ。
ある少年の告白《Boy Erased》の、あらすじ|同性愛者を理解できずに苦しむ父と、全面的に息子の味方をする母と
バプティストの説教師である父と、美容師である母の間に生まれた一人息子、ジャレッド・イーモンズ。同性愛者である彼は、異性愛者に矯正させるセラピー評価プログラム「Love in Action」に入所する。
そこのチーフセラピストであるヴィクター・サイクスは「彼らのセクシャリティは貧しい子育てに影響された選択である」などと言って、自身と家族について『モラルの棚卸し』を行うよう厳しく指示。そして、セッションの内容を誰にも話さないように要求する。
このプログラムに従いながら、ジャレッドは以前の生活を思い起こしていた。
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高校時代は普通の青春を謳歌していたジャレッドだったが、大学入学を機に付き合っていたガールフレンドと別れる。そしてある日、大学で友人になったヘンリーがジャレッドの寮の部屋に一泊した際、ジャレッドはヘンリーにレイプされる。すぐに謝られたが、彼は他の学生にも同じことをしたと言う。
トラウマを抱え、ジャレッドは家に戻った。
ヘンリーは秘密を暴露されることを恐れて、学校のカウンセラーを装いジャレッドの家に電話をかけ両親からジャレッドを引き離そうとする。そんなゴタゴタの中で、後にジャレッドは自分が男性に惹かれていることを告白するのだった。
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プログラムに参加してまもなく、ジャレッドは完全に異性愛者に転身できなければセラピーは終われないということを知る。そのため、ここには本当に変わりたいと願っている学生だけでなく、変化したフリをして帰れるようゲーム感覚で受けている者もいた。
母のナンシーは、プログラムが終了しジャレッドが退所できるようになるまで、近くのモーテルの部屋を借りて一緒に滞在していた。そこでジャレッドは母に、このプログラムの問題点を話し、プログラムのハンドブックに書かれているインチキ臭い心理学の内容や多くの文法の間違いや誤字脱字を見せる。
施設では、訓練に失敗した参加者のキャメロンがメンバーたちの前でサイクスに辱められ、模擬の葬儀で威圧されていた。セラピストたちと自分の家族から聖書で殴られ、無理やりバスタブに沈められる光景を、ジャレッドが恐怖に怯えながら見ていた。
告白をする順番が、ジャレッドに回って来た。彼は大学時代の美大生との短い出会いを話すが、セラピストのサイクスは「少年と手をつないだだけでは告白として足りねえ」と言い、もっとはっきりした内容を話すよう迫る。ジャレッドは「嘘はつけない!」と言い返してこれ以上の告白を拒否した。
しかしサイクスは、さらにこの怒りを利用して「父親を憎んでいる」と言わせようとする。ジャレッドは、自分が怒っているのはサイクスに対してだ、とこれを拒否した。
完全にキレたジャレッドは部屋を飛び出し、自分の携帯電話を取り回して母ナンシーに連絡、迎えに来てくれるよう懇願する。サイクスや、そのアシスタント、そして他の出席者は、ナンシーがいるにもかかわらず、彼を鍵のかかったドアの後ろに追い詰めた。キャメロンの助けもあり、無事ナンシーの車に乗り込んだジャレッドは家に連れ帰ってもらう。
帰宅したナンシーは、夫マーシャルがよく調べもせず未審査のプログラムに参加させたことを知り愕然とする。マーシャルは、なおもジャレッドをプログラムに参加させることに固執するが、ナンシーは断固としてそれを阻止。
その後ジャレッドは母親を通じて、警察からキャメロンがプログラムに預けられている間に自殺したことを知らされた。父はジャレッドを慰めようと近づくが、ジャレッドは背を向ける。
4年後、ジャレッドはボーイフレンドとニューヨークで暮らしていた。物書きとなった彼は、Love in Actionの実態を暴露する記事を発表。
そして実家を訪れた彼は、父親に記事を読むように伝え、変わらなければならないのは自分ではなく父親であると告げる。そして、クリスマスには母親と一緒に自分のもとを訪れるよう誘った。
ある少年の告白《Boy Erased》の、観る前に知っておきたい知識と見どころ|人の指向は、他人が無理に矯正するものじゃない
この手の「矯正」施設は今でも存在します
私好みの、ほんとにあった話をもとにしたお話です。このLove in Actionという集まりは、なんと2012年まで存在していたといいますから、言うほど昔の話ではないんですよね。
映画の完成時点で、まだ36もの州において、この手の施設が認可されているなんて書かれていました。
他人が無理に矯正できるのか?
「生まれつきの同性愛者などいない」という、同性愛は後天的に身につけるものという主張。おそらくだけど、それは人によって違うもんですよ。
だから理解できようとできまいと、他人が無理に矯正するものじゃないですね。人権の問題です。これまでキャメロンみたいに自死まで追い詰められた人、結構な数がいたんでしょうね。
ある少年の告白《Boy Erased》の、キャストと予告編|Cast and Trailer
◎1h55m (2018)
- ジャレッド・エモンズ(主人公、同性愛者):ルーカス・ヘッジズ
- マーシャル・エモンズ(ジャレッドの父親、牧師):ラッセル・クロウ
- ナンシー・エモンズ(ジャレッドの母、息子の味方):ニコール・キッドマン
- ヴィクター・サイクス(LIAのチーフセラピスト):ジョエル・エドガートン
- ヘンリー(大学の同級生、ジャレッドが自分の性的指向に気付くキッカケとなった):ジョー・アルウィン
- キャメロン(転換療法プログラムの参加者):ブリットン・セアー