まぁ自分は「どんな作品でも見る人次第で必ず得られるもの感じ取れるものがある」というスタンスなので、世間でレビューの星が少なくても、自分が我慢できなくなるまでは見てみるというポリシーで生きております。
たとえ俳優たちのセリフがストレスを感じるほど聞き取りにくかったとしても。
この映画を語るいろんな媒体が「2008年の事件をモチーフに…」とかいってるけど、あまり関係ない気がします。ちなみに個人的には、秋葉原という街は人生で10回くらいは訪れたかなという程度なので、個人的な思い入れはほどんどありません。
この作品においても、ナントカリフレで働きながら地下アイドルをしているミサ以外は、あまり秋葉原自体は関係ありません。じゃあ何がそれなのかというと、秋葉原無差別殺傷事件を起こすような人間は決して特別なのではなく、周囲に、なんなら自分も下手すりゃそうなる可能性がありますよということかと。
外(他人)から見ている以上に悩み苦しんでいる人はいっぱいいて、何かをキッカケに爆発するかもしれませんよということかと。
登場する3人の若者を通して、私はそんなふうに感じました。
ノイズ《Noise》の、あらすじ ── 3人の若者が秋葉原という街で、ギリギリで生きていくお話
高校生の桜田美沙は、地下アイドルLUUKAのメンバー。事務所が経営するJKリフレ店で働いている。リフレ店とは「リフレクソロジーの店」の略で、普通にマッサージをしてくれる店だが、JKが付くと女子高生風の人がマッサージしてくれる店になる。
美沙の母は秋葉原無差別殺傷事件の被害者で、生気を失った父親とともに夢も希望も見失っている。
山本里恵も女子高生。母親は家を出て行き、祖父は寝たきり。
父親に反抗しつつも孤独を感じており、頭の悪そうな同世代の子どもたちと夜な夜なつるんでいる。
大橋健は通信教育を受けながら大学を目指し、配送のアルバイトをしている。しかしギャンブル狂の男に貢ぐ母親が多額の借金を抱えており、管理会社に家を追い出されたり闇金風の借金取りが押しかけてきたり。
これら3人の若者が秋葉原という街で、周囲の大人たちに翻弄され、それぞれの環境にイラ立ち、未来を潰されそうになり、フラフラになりながらギリギリで生きていくお話です。
この先の展開しだいでは、何か事件を起こしたり巻き込まれたりするかもしれません。
ノイズ《Noise》の見どころ ──「十九歳の地図」の主人公を思い出した
永山則夫と中上健次
初めの方で永山則夫と中上健次の名をちらつかせるのは、サブカル気取りにも見えるし、苦悩する若者のイメージ付けにもとれます。
大橋くんは、母親さえまともならちゃんとした大学生送れてそうなんですが…。
「十九歳の地図」を思い出す
登場人物に対して「怒りをぶつける相手が違うだろ」と思いますが、こういう人たちってストレスでまともな思考回路に無いわけで、だから恐ろしいわけなんですよね。
そんなわけで、あれを思い出しましたよ。新聞の配達先で気にくわない家にバツ印をつけていく十九歳の地図の主人公。上に書いた中上健次作の小説。
AKB48劇場
そういやAKBの劇場って今どうなっているのだろうと調べてみたら、まだやってるんですね。もう20年近く続けているとは素直にスゴいと思います。
ノイズ《Noise》のキャストと予告編 ── Cast and Trailer
◎1h55m (2019)
- 桜田美沙(女子高生。地下アイドルをしながら事務所が経営するリフレ店で働く):篠崎こころ
- 山本里恵(父親をめちゃくちゃ嫌ってる高校生):安城うらら
- 大橋健(クソ母に翻弄されながらイラ立ちを世間の他の人間にぶつける少年):鈴木宏侑
- 美沙の父(競馬好きのヘビースモーカー):岸建太朗
- 理恵の父(娘に嫌われ地下アイドルに興味を持つ):布施博
- 健の母(息子を残して借金取りから逃げ回る):川崎桜
- 高橋(地下アイドルLUUKAのマネジメントを行う):小橋賢児
- 山崎(LUUKAの事務所のトップで、大きな事務所への移籍をチラつかせて枕営業を持ちかける):來河侑希
- 健の職場の所長(この物語においては無害っぽい人):仁科貴