Clash のベーシストだったポール・シムノンも、かなりのイケジジだと思いますが、この人にはやはりかなわないでおなじみクリント・イーストウッド監督の作品です。
全部観たわけではないですが、初期のドル箱三部作やダーティハリーシリーズから現在まで彼の「無骨だが優しく力持ち」な役柄は、阿部の寛さんと並んで健さんの流れを継承する俳優の一人である、なんて思うのですが、いかがですか?
故・N.リチャード・ナッシュの同名タイトル小説を原作としたこの作品は、当初アーノルド・シュワルツェネッガーが主役だったそうですが、彼が主役だったら途中で旅路を邪魔しに来る母の用心棒とか悪徳警官とかみんな簡単にやっつけちゃいそうですよね。
クライ・マッチョ《Cry Macho》の、あらすじ|昔の俺はすごかった。だが、今は違う
1979年。テキサスのロデオ(ロデオとは、暴れる馬を乗りこなしたり投げ縄をしたりなど、カウボーイとしての技術を競う競技)のスターだったマイク・マイロは、背中に大怪我を負ったことが原因で引退し、現在では馬の調教師として暮らしていた。
ある日、牧場主のハワード・ポークから「メキシコ・シティに住んでいる15歳の息子、ラフォを自分のところに連れてきてほしい。そうすれば報酬として5万ドルを渡す」と言われ、ハワードに義理のあるマイクはそれを承諾する。
メキシコ・シティでは、まずラフォの母親であり違法なビジネスをいくつも経営しているレタに会った。
彼女は、ハワードがこれまで息子を引き取ろうと何人かに依頼してきたがみんな失敗したこと、現在ラフォが犯罪に手を染めたり闘鶏に参加するなどしてストリートで暮らしていることを知らせる。
それを聞き、街にラフォを探しに出たマイクは闘鶏に参加しているラフォを発見、父親が一緒に暮らしたがっていることを伝えた。彼は不安を感じつつも、マイクと一緒にテキサスに戻ることを承諾し、荷物を取りに出かける。
マイクはレタに、ラフォと一緒にこの街を去りテキサスへ向かうことになったと報告するが、レタは信じずマイクをベッドへ誘う。相手にしないマイクにレタは激怒して、すぐにメキシコシティから出ていかないと息子を誘拐されたと警察に言うと脅してきた。
マイクが去った後、レタは子分たちに後を追うよう命じる。マイクは一人でテキサスに戻ろうとするが、ラフォが雄鶏のマッチョと一緒にトラックに忍び込んでいるのを発見。連れて行け、行かないとの応酬の結果、最終的にマイクは彼を連れて行くことに同意する。
車を走らせる中で、ラフォがレタの子分に虐待されていた話や“マッチョ(スペイン語で男らしさの意)”であることの意味などについて語り合う。
途中立ち寄ったレストランで、マイクはハワードに電話をかけ、ラフォを見つけたことを知らせる。そのときレストランの外で、2人を追跡していたレタの子分の一人が、ラフォを強引に連れ去ろうとしていた。子分は、レストランのところにいた地元の人たちに対し「マイクが誘拐した」と騒ぐが、機転を利かせたラフォは逆に、子分が自分を誘拐しようとしていると叫んで背中のアザを見せる。
それを見聞きした地元の人たちは大勢で子分の方をタコ殴りにした。
そのスキにマイクとラフォはうまく逃げおおすことができたが、途中道端で野グソ休憩をしているときにマイクのトラックが通りがかりの盗人に盗まれる。アメリカ人ぽく見えると泥棒のターゲットになりやすいとのことから、マイクは地元の人間に見えそうな新しい服を買う。その間にラフォは道に停めてあったボロボロの車を“借り”、2人はその車で移動する。
途中、立ち寄った町でカンティーナ(スペイン語圏のバー、カフェのこと)に入った2人は、2人を追う連邦警察から店主のマルタに助けられる。その後、雨やどりとして入った古い教会で、マイクは「妻と息子を交通事故で亡くし一時は酒に溺れていたが、ラフォの父親に助けられた」とラフォに語る。
翌朝ラフォは車からオイルが漏れているのを発見。そこで、2人は当分この町にとどまることにした。徒歩で移動する最中、牧場に出くわしたマイクとラフォは、野生の馬に手を焼くそこの牧場主に調教の手伝いを申し出る。
マイクは仕事の合間にラフォに馬の乗り方を教え、動物への愛情を示す。その後2人はマルタのカンティーナに戻って、彼女の家族と過ごした。マルタは娘夫婦を病気で亡くし、3人の孫と一緒に暮らしていたのだった。
マイクは現在の状況を知らせるためラフォの父ハワードに電話をするが、彼はマイクが2週間もメキシコにいることに文句を言う。
そして同時に、息子を呼び寄せる本当の事情「数年前レタの名義で投資したメキシコの不動産が満期を迎え大金を生んだので、取り分を確保する交渉の為にラフォを切り札とするつもりだ」ということを打ち明けた。
マイクは騙されたと悪態をついたが、ハワードは金のためだけでなく息子への愛情もあると言い、改めて予定通り国境で落ち合う約束をする。Eydie Gormé & Trio Los Panchosの"Sabor a Mí"が流れるなか、マイクとマルタ、ラフォと孫娘の一人はいい雰囲気になり、すっかり町に溶け込む。
しかし子分のアウレリオと警察官はマイクとラフォを探して、すでにこの町まで来ていた。2人はマルタと孫たちに短い別れを告げ、新しく“借りた”車で最後のドライブを始める。
国境に向けしばらく走っていたが、マイクは途中でパトカーが追ってきているのに気づき、尾行をまいた後に停車する。そこでマイクは、父のハワードが電話で話した「投資の収益のためにラフォを呼び戻したい」と言った内容を明かす。
怒ったラフォは車を降りて出て行こうとするが、そのとき先程の警察が追いついてきた。彼らはマイクとラフォを追いかけてきたわけではなく、ドラッグを探す名目で暗に賄賂を求めてきた。ラフォは金を渡して警官を立ち去らせ、結局2人は旅を続ける。
マイクとラフォは再び人生について語り合い、ラフォは改めて父親に会う決心をするのだった。
そこへ突然、2人をしつこく追いかけてきた母レタの子分アウレリオが車をぶつけてきて走行の邪魔をする。道端に追いやられ車を降りたマイクに、アウレリオは銃を突きつける。しかし再び雄鶏のマッチョが飛びかかり、そのスキにマイクが銃を奪った。
二人はアウレリオの車に乗り換え、ついに国境までたどり着く。最後の別れのとき、ラフォはマイクにマッチョを託し、父の元へ歩いていった。
マイクはそのまま国境のメキシコ側に残り、マルタの元に戻っていった。
クライ・マッチョ《Cry Macho》の見どころ|スペイン語のマッチョという言葉の意味
晩年は孤独な方が死にやすい?
最近のクリント・イーストウッドは、孤独で寂しそうなんだけど不器用ながら若者と心の交流を深めていく老人の役ばかりですが、なんだか老いてからの生き方の理想形に思えてなりません。
人によってはできるだけ大勢の人に見送られたいなんてこと考えたりするみたいですが、できるだけ孤独な方が死にやすいとかないですかね。
追手のアウレリオがドジすぎてだんだん可愛くみえてくるため、特に脅威を感じるような大きな出来事は起こらず。
この作品、いわゆるロードムービーにカテゴライズしてもいいかもと思いました。
macho(マッチョ)という単語の意味
日本人ならみんな知っているけど、ほんとうの意味がほとんど知られていないスペイン語、macho(マッチョ)。
我が国では、何に使うというものでもない筋肉を、ただひたすら鍛え、鏡を見てうっとりする男性のことを指すことが多いですが、スペイン語圏では男性優位を誇示するさまとして使われます。
つまり男尊女卑のイメージがあるので、古臭くて今ではあまり好まれない言葉らしいです。
ただ、馬を操れるってこんなにカッコいいんですね。マルタが「うっふん」となるのも無理ないですね。
こんな簡単にクルマ盗んでいいの?
こんな簡単にクルマ盗んでいいの?と思ったけど、全員がそれぞれお互いに盗みあったら、それはそれで一種のカーシェアリングと言えなくもない気がした。
過去の自慢話をしないジイさん
「I used to be a lot of things. But I'm not now」
過去の自慢話するジイさんではなく、こういうジイさんになりたい。まぁ自慢できる話なんか、もともと持ち合わせていないんですけど。
みんなもキャバナントカに行くときはこういう姿勢で臨むのがいいのではないでしょうか。
国境の長さ
ジョー・バイデン大統領が、20マイル(約32kmくらい)のトランプ政権がやっていた壁建設を再開すると言いましたが、国境ってとんでもない長さなんですよね。
こんなの不法入国を防ぎようがない気がしますね。
山や海に囲まれた国はラクでいいですね。
Cast and Trailer《クライ・マッチョ「Cry Macho」のキャストと予告編》
◎1h44m (2021)
- マイク・マイロ(元ロデオスター。牧場主の依頼を受けメキシコまで少年を迎えに行く):クリント・イーストウッド
- ハワード・ポーク(ラフォの父であり、テキサスの牧場主でマイクの雇い主でもある):ドワイト・ヨアカム
- ラファエル “ラフォ” ポーク(ハワードの息子、現在はメキシコに住んでいる):エドゥアルド・ミネット
- レタ(ハワードの妻、ということはラフォの母。毒親):フェルナンダ・ウレホラ
- マルタ(小さな町でカンティーナを営んでいる女性):ナタリア・トラヴェン
- アウレリオ(レタの部下の一人で、マイクとラフォをしつこく追いかける):オラシオ・ガルシア・ロハス