私の好きなジャンルのひとつ、実録系です。実録モノと言いましても、もちろん怖い顔のおじさんたちやドスの利いた広島弁が出てくるわけではありません。
イギリスで発行されている老舗の新聞「ザ・ガーディアン」への寄稿や、文化評論家としてBBCの「ニュースナイト・レビュー」や「サタデー・レビュー」といった番組に出演するジャーナリスト、サルフラズ・マンズールさんの自叙伝をベースにした映画です。
移民と差別、親子間の衝突と愛、恋と友情、それらにブルース・スプリングスティーンの楽曲がまとわりついていきます。
私、昔は "Born to Run" とか有名な5,6曲しか知らず、"The Boss" というニックネームからも、日本でいう長ナントカさんとかYAZAナントカさんみたいなファンが熱中症な類いの人なのかなとか思ってたんですけど、RATMがカバーした "The Ghost of Tom Joad" をきっかけに認識をあらためたアーティストです。
あとパルプフィクションのダンスシーンでおなじみ、チャック・ベリーの "You Never Can Tell" をライヴで演ってたのも超絶楽しかった。
カセットテープ・ダイアリーズ《Blinded by the Light》の、あらすじ|家族とブルース・スプリングスティーン、そして自分が進むべき将来
Iron Lady(鉄の女)と称されたマーガレット・サッチャーが英首相を務めていた1987年。ロンドン近郊、と言っても約50km離れた町ルートンに家族とパキスタンから移り暮らしているジャベド・カーンは、父親が嫌う西洋のロックを好んで聴いた。
しかし常に周囲から人種差別を受け続けてきた父のマリクは、ジャベドに対し「女の子にうつつを抜かさず、民族として成功しているユダヤ人に従え」と説く。
そんな中、学校では居場所が無いように感じていたジャベドは、ライティング担当であるクレイ先生に自分の日記や詩を見せたことをきっかけに、ライターを職業として意識するようになる。
ある日の昼休み、ターバンを巻いたシーク教徒のループスが近づいてきて、ブルース・スプリングスティーンのカセットテープを2本渡す。彼は「スプリングスティーンは、このクソみたいな世の中で真実であるすべてのものへ繋がる直通電話だ」と言う。
一方ジャベドの父マリクは、16年働いてきた会社から解雇される。そのため母親は、生活費を稼ぐために裁縫のアルバイトを始める。そして学校新聞で記事を書かせてくれと頼むも断られたジャベドは、人種差別や父親との確執もあり、大嵐の夜にこれまで書いてきた詩を捨ててしまう。
しかしスプリングスティーンのテープを聴き「彼は自分の気持ちがよくわかるんだ」とループスに興奮気味に話し、再び詩を書き続けたいと考える。そして、道ばたに捨てていた「国民戦線をクズだと罵倒するジャベドの詩」を回収した、退役軍人であるエヴァンスさんに「素晴らしい詩だ」と褒められる。
また、ジャベドは同級生のイライザを誘い、スプリングスティーンの曲を聴きながら一夜を過ごす。
一方、クレイ先生は彼の詩と記事を気に入り、ヘラルド紙でインターンシップをするように手配した。そこで人種差別について書いた記事が一面に選ばれ、報酬を得ることができたジャベドは、その金でスプリングスティーンのコンサートのチケットを買うことにする。
しかし街では国民戦線がデモ行進を組織し、地元のモスクに豚の頭を吊るすなど、イスラム教徒と国民戦線の間に緊張が高まっていた。姉の結婚式の日、家族は別々に会場へ向かうが、ジャベドがチケットを買うため店に走っている間、国民戦線のメンバーが父のマリクに暴行を加える。
帰宅後、金を稼いでいたことを隠していたジャベドに腹を立てた父はチケットを引き渡せと言うが、ジャベドは自分のものだと主張。さらにはルートンを出てマンチェスターの大学に行くと言い出し、喧嘩になってジャベドは家を飛び出す。
その後、クレイ先生はジャベドに「ジャベドが書いたスプリングスティーンに関するエッセイが認められて、ニュージャージー州アズベリーパーク近く(スプリングスティーンの故郷)にあるモンマス大学の講義に参加できることになった」ことを告げる。
ジャベドは最初、アメリカ行きなんて父親が許すわけないと考え断っていた。しかし家に書かれた人種差別的な落書きを見て、考えを変える。結局ジャベドとループスはアメリカへ行き、アズベリーパークをめぐる旅を楽しんだ。
学校で行われた成績優秀者の受賞式。ジャベドはスピーチで夢を語る予定だったが、家族が会場に来ていることに気づき、アドリブで内容を変更。父親の苦労や地域社会が自分を形成してきたことを受け入れ「夢への橋は架けるが、家族と自分の間に壁は作らない」と語る。
ジャベドは、自分の家族を会場に誘ってくれた彼女のイライザと仲直りし、スピーチに感銘を受けた父マリクと和解した。ジャベドと父マリクは、仲良く一緒にクルマの中で "Born to Run" を聴きながら大学へ向かった。
カセットテープ・ダイアリーズ《Blinded by the Light》の、観る前に知っておきたい知識と見どころ|話が通じない父親の存在は、時代や場所を問わない
家族信仰を、あまり崇高なものにしない方がいいですね
時代や場所に関係なく、つねにガンコ親父は家族のガンですね。
あと家族信仰も時代や場所に関係ないんですね。「家族愛」はあくまでもひとつの愛の形であって、あんまり崇高なものとして扱わない方がいいかな、と思います。
不凍港を求めるソ連
時代背景をイメージ付けるのに「ソ連のアフガニスタン侵攻」なんてキーワードが出てきて、あの国は永遠に不凍港を求め続る必要があるのかしら、なんて。
ケチらないで、すべての港に暖房入れればいいのに。
知を求めるのなら、ChatGPT
ルートンという街。LutonでG検索すると、ちゃんと映画の舞台になったイギリスの街が出てきますが、カタカナで探すと1ページ目はまるまる植物ホルモン剤が出てきます。
ところがChatGPTだと、カタカナ聞いてもバッチリ「イングランドの南東部に位置する都市です。ロンドンから約50km離れており、空港があり、観光客にも人気のある場所です」と教えてくれました。
今後、探しものするのではなくシンプルに知を求めるのなら、ChatGPTの方がいいなと思いました。
世の中をよくする仕事
「作家の仕事は世の中をよくすること」って、これ作家の部分を別の職業にして何でも言えそう。
ヘイト=無知無学
その土地に溶け込もうとしない側も一因だとは思いますが、差別がひどい。違う(異質な)ものを排除するのは生物の本能的なものなので無くなりはしないだろうけど、人間には知性と理性がありますからね。
だからヘイトな人たちって無知無学というか下品というか、そんな風に見えるんですね。
街の風景にリリックを映す映像を作ったのは誰が最初?
スプリングスティーンさんについては "Born in the USA" の、あの80年代特有のゲートリバーブなスネアの音がキツくて遠慮してきました。でも、もし英語ネイティヴだったらリリックがすんなり入ってきて、もっと楽しめたかもしれません。そう考えたら私、生まれる国を完全に誤りました。
ところで、プロジェクションマッピングみたいに街の風景にリリックを映す映像を作ったのは誰が最初なのかしら?大根仁監督がやってるのよく見ますけど。
チューバッカって何?
スターウォーズを観ていないので「チューバッカ並に毛深い」のチューバッカが何だかわからず調べちゃいました。
カセットテープ・ダイアリーズ《Blinded by the Light》の、キャストと予告編|Cast and Trailer
◎1h57m (2019)
- ジャベド・カーン(主人公。パキスタンから家族とイギリスに移住してきた少年):ヴィヴェイク・カルラ
- マリク・カーン(ジャベドの父、頑固):クルヴィンダー・ギール
- クレイ先生(ライティングクラスの先生。ジャベドの才能を見出し、応援する):ヘイリー・アトウェル
- ループス(ジャベドの親友。彼にスプリングスティーンを教えた):アーロン・ファグラ
- ヌール・カーン(ジャベドの母、内職で家計を支えている):ミーラ・ガナトラ
- ミスター・エバンズ(カーン家の隣人。はじめは無愛想だったが、ジャベドの詩を読み才能を評価する):デヴィッド・ヘイマン
- イライザ(ジャベドの彼女):ネル・ウィリアムズ