スピルバーグが監督を務めた「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」は、実在のイカれた人物フランク・アバグネイル・ジュニアの話にほぼ基づいており、この映画も実名でストーリーが展開します。とはいえ、多くのこの手の映画と同様に、事件関係者への気遣いや視聴者を飽きさせないための工夫などを考慮し一部の要素は脚色あるいは改変されています。真実と捏造の内訳は次のとおり。
<実話>
- フランクの詐欺師としての経歴:フランクはパンナム航空のパイロット、医師、弁護士になりすまし、19歳になる前に数百万ドル相当の小切手を偽造した。
- FBIの追跡:フランクは確かにFBIに追跡されていたが、カール・ハンラティのキャラクターは彼の事件に関与した複数のエージェントの合成である。
- フランクのFBIでの最終的な仕事:刑務所で服役した後、フランクはFBIで詐欺を見破るためのセキュリティコンサルタントとして勤務した。
- 看護師との恋愛:医者のふりをして出会った若い女性との関係が描かれているが、これはほぼガチ。
<創作>
- 家族生活:映画では、フランクは再婚した母親を持つ一人っ子として描かれているが、実際には彼には兄弟がいて母親は再婚していない。
- 父親との関係:映画では刑務所にいる間ずっと父親と連絡を取り合っていたが、アバグネイルは逃走後、父親に二度と会わなかったと語っている。
- 飛行機からの脱出:映画では飛行機からトイレを通って脱出するが、実際にはキッチンの調理室を通って脱出した。
- タイムライン:映画では、フランクの犯罪行為をより短い期間に圧縮している。だが公的記録によると、逃亡中と主張していた期間の大半は実際には刑務所にいた。
- 詐欺の規模:フランクの突飛なエピソードのいくつか、たとえばアリゾナ大学の若い女性を募集してパンナム航空の費用でヨーロッパ旅行をさせたことなどは、関係する企業から異議を唱えられている。
映画は実話に基づいていると主張してはいますが、一部の研究者やジャーナリストはフランクの主張の多くの真実性に疑問を呈しています。映画の描写は面白いですが、これ以上に誇張されている可能性が大いにあるため、あくまで映画として楽しんだ方がいいかもしれません。
キャッチミーイフユーキャン《Catch Me If You Can》の、あらすじ|なりすましで数百万ドルを得た男
1969年、FBI捜査官カール・ハンラティはフランスのマルセイユに到着、刑務所の劣悪な環境により病気になったフランク・アバグネイル・ジュニアという囚人をアメリカへ送還した。
6年前、フランクはニューヨークのニューロシェルで、父フランク・シニアとフランス人の母ポーラと暮らしていた。少年時代、彼は父親の詐欺のテクニックを目の当たりにするが、やがて一家はフランク・シニアの国税局との税務問題によって、家を出て小さなアパートに引っ越すことになる。
ある日フランクは、母が父の友人でニューロシェル・ロータリー・クラブのジャック・バーンズと浮気しているのに気付いた。その後、両親は離婚しフランクは家出する。金が必要だったため、生き残るために信用詐欺に手を染めるようになった。試行錯誤の後、彼はフランク・テイラーという名のパンナム航空のパイロットを装って、航空会社の給与小切手を偽造する。やがて、彼の偽造は数百万ドルの価値を持つようにまでなった。
そのうち彼の犯罪はFBIに探知されることとなり、捜査官のカールはフランクを追跡し始める。カールはモーテルでフランクを見つけるが、フランクは自分をバリー・アレンというシークレット・サービスのエージェントだと名乗り、カールが騙されたと気づく前に彼はうまく逃げ出す。
次に、フランクは医者になりすました。同じ職場の病院で働く純朴な若い看護師のブレンダと恋に落ち、弁護士である彼女の父親にルイジアナ州の司法試験を受けるための準備を頼み、フランクは合格。カール捜査官は彼らの婚約パーティまで追跡するが、それに気付いたフランクはブレンダに「2日後にマイアミ国際空港で落ち合あおう」と告げ、寝室の窓から逃亡した。
空港でフランクはブレンダの姿を見つけるが、すでに私服の捜査官たちが張り込んでいた。フランクはブレンダに見限られたことを悟り、パイロットになりすまして地元の大学でCAの募集をかける。そして合格とした8人のCAたちに囲まれながら身を隠して空港に潜入、マドリード行きの便で逃亡した。
1967年カール捜査官は、母親の故郷であるフランスのモンリシャールに潜んでいたフランクを探し出し、フランス警察に自首するよう説得する。フランクは即座に逮捕され連行されるが、カールは彼をアメリカに送還すると約束する。
1969年、カールはフランクとアメリカへ向かう。しかしフランクは飛行機から逃げ出し、再婚して新しい家族がいる母親の家にたどり着く。幸せそうな家族を見てフランクは自首、12年の懲役刑を言い渡される。
カールは、ときどきフランクを訪ねた。ある日、担当している事件の不正小切手をフランクに見せると、すぐに銀行の窓口係が詐欺に関与していることを見抜いた。感心したカールはFBIを説得し、残りの刑期をFBI金融犯罪課で働かせることにする。
ある日、カールはフランクに「ルイジアナ州の司法試験では、どうやってカンニングしたんだ?」と尋ねるが、フランクは「普通に勉強して合格した」と答える。カールは笑いながらフランクに本当かどうか尋ねるも、フランクは答えず新しい詐欺事件についてカールに意見を述べた。
その後…。フランクは妻との間に3人の息子をもうけ、26年間アメリカ中西部で暮らした。カール捜査官とは友人であり続け、銀行詐欺と偽造犯罪対策のコンサルタントとして生計を立てた。
キャッチミーイフユーキャン《Catch Me If You Can》の、観る前に知っておきたい知識と見どころ|他人を騙すことを楽しむサイコパス
サイコパスの特徴
人を騙すことを楽しんでるようにみえるフランクは、完全にサイコパス(反社会性パーソナリティ障害の一種)の傾向が見えます。
〈病的な虚言癖〉
サイコパスは幼い頃から嘘をつく傾向があり、妄想と現実の区別がつかなくなることも。嘘をつくこと自体がうまく、それを楽しみます。
〈人を操作する目的〉
人を騙したり操作したりすることで、自分の目的を達成しようとします。実利的な理由だけでなく、人を騙すことそのものに喜びを感じる場合もあります。
〈表面的な魅力〉
サイコパスは口が達者で表面的な魅力があり、人を引き寄せやすい特徴があります。この魅力を利用して人を騙します。
〈罪悪感の欠如〉
他者への共感や思いやりが欠如しているため、人を騙すことに対して罪悪感を感じません。そのため、平気で嘘をつき騙し続けられます。
ただし。サイコパスの傾向がある人たちの中には政財界の大物など社会的に高い地位にある人も多く、必ずしも全てのサイコパスが危険な犯罪者というわけではありません。
母親の浮気
サイコパスの原因については「先天的要因」と「後天的要因」の両方が関与していると考えられていますが、実際にフランクが詐欺師への道を突っ走りはじめた「キッカケ」は、やはり母親の浮気が大きかったのではないでしょうか。
似たようなキッカケで、とんでもなく性格がねじ曲がりまくった人に「メジャー史上、最も偉大かつ最も嫌われた選手」と言われたタイ・カッブが思い出されます。
ある日タイ・カッブの父は、妻の浮気の現場を抑えるため出張と嘘をつき夜中にこっそり自宅に戻ります。強盗と勘違いした妻はショットガンで夫を射殺しました。これは正当防衛として無罪になるのですが、裁判後に判明したところによると実際に撃ったのはその浮気相手だったそうで。
この事件以来、カッブは決して母親と会おうとせず、めちゃくちゃ暴力的になったとのこと。
この詐欺師から学べること
パイロットや医者なんてめちゃくちゃ人命に関わる職業であって、まともになるには厳格な試験に通らないとならないし採用時の身元確認も超厳しいはず。いくら今よりゆるい時代だったとはいえ、あまりにも信じがたい事実です。
言い換えれば、人は服装や態度などオーラでいくらでも騙せるということでしょうか。この姿勢は、犯罪でない一般生活でも応用できそうです。
偽装小切手も疑われて改良を繰り返すという、失敗を重ねて学んでいく様は何かと一緒ですね。
曲のタイトル
この題名「Catch me if you can」の元ネタは、デイブ・クラーク・ファイブの「Catch us if you can」かと思うのですが、いかがでしょうか。この曲のさらに元ネタがあるのでしょうか。
キャッチミーイフユーキャン《Catch Me If You Can》の、キャストと予告編|Cast and Trailer
◎2h21m (2002)
- フランク・アバグネイル・ジュニア(主人公の天才詐欺師。詐取でミリオネアになる):レオナルド・ディカプリオ
- カール・ハンラティ(フランクを追うFBI捜査官、なぜか最後は友人に):トム・ハンクス
- フランク・アバグネイル・シニア(主人公フランクの父、経営失敗で破産するわ妻には浮気されるわ、散々な人):クリストファー・ウォーケン
- ポーラ・アバグネイル(フランクの母、フランス人):ナタリー・バイ
- ジャック・バーンズ(父の友人で後に母と結婚。ニューロシェル・ロータリー・クラブ会長):ジェームズ・ブローリン
- ブレンダ・ストロング(フランクと婚約する若い看護師):エイミー・アダムス