「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」等々でおなじみ、言わずと知れた山田洋次監督2021年の作品です。夢を追った若き日の青春時代を振り返りながら「まぁ悪くない人生だった…」と自身を振り返るくらいの世代な方に刺さる内容かな、と。
もちろんそれ以外の人にも充分楽しめると思います、あらかじめ犯人が誰なのかを知らないで見れば。
原作は原田マハさんの長編小説で自分は未読なのですが、映画版は見せ方がだいぶ違うみたいですね。山田監督って原作変えがちな作風ですよね、いい悪いはわかりませんけど。
元の小説は登場人物も多いようなので、どうせなら個人的に大好きな片桐さんの出番がもう少し多いと嬉しかったです。むしろ北川さんの役を片桐さんが演じてもよかったかもしれません。
キネマの神様《It's a Flickering Life》の、あらすじ|母さん。淑子。僕の淑子ちゃん。ありがとう。
2019年、ラグビーのワールドカップ日本大会で騒がしい頃、円山歩が勤務する出版社に電話がかかってくる。歩の父、郷直(ごうちょく、通称:ゴウ)が借りた闇金業者からの督促である。
ギャンブルとアルコール依存症の父に悩まされ続けてきた歩と母の淑子は、依存症の相談会に出席。そこで得た解決策として、2人は年金とシルバー人材派遣の給料が振り込まれるゴウの通帳を取り上げる。
生きる楽しみを奪われたとむくれたゴウは家を出て、古くからの友人で名画座館主である寺林新太郎、略してテラシンの映画館へ行く。そこで、近く上映する予定の作品の試写に誘われる。映画を観ながら、ゴウはある場面でヒロインの桂園子の瞳に自分が映っている、と感慨深げに語る。
──50年前。
ゴウは映画監督を目指し、テラシンは映写技師として松竹映画撮影所で働いていた。その撮影所の近くにある食堂「ふな喜」は、映画人たちの溜まり場。ある日、そこの看板娘の淑子にゴウを介して会ったテラシンは、淑子に一目惚れをする。しかし淑子はゴウに好意を持っていたのだった。
ところが、ゴウの初映画監督作品「キネマの神様」のクランクインの日。ゴウは緊張のせいで腹を壊し何度もトイレに駆け込み、そのたびに撮影が中断、さらには撮影アングルのことでキャメラマンの森田とケンカをしセットから落ちてケガをしてしまう。
ゴウは完全に落ち込み撮影を中止し、撮影所も辞めて田舎に帰ると言い出す。そのうえ「淑子ちゃんはどうするんだ」と責められ、テラシンともケンカ別れになってしまう。しかし淑子は、それでもゴウに着いて行くと決めて家を出ていく。
──再び現代。
長い年月が経ち、ゴウと淑子は娘の歩と孫の勇太の4人で暮らしている。
こっそり家に戻ったゴウは、テラシンから借りたゴウの作品「キネマの神様」の脚本を読んだ勇太から「このままギャンブル好きのアル中で死んでいいの? 一緒に現代風に打ち直して脚本賞に応募しようよ。賞金は100万円だよ」。
それを聞き、賞金につられたゴウは勇太と脚本の手直しを始める。
その後しばらくして、ゴウが息を切らしながらテアトル銀幕に駆け込んで来た。何事かと心配するテラシンに、ゴウは映画雑誌を差し出して、その年の最も優れた脚本に贈られる城戸賞を受賞したことを伝える。
ギャンブルの仲間など周囲の人たちも喜んでくれ、祝杯と称して飲み歩くゴウだったが、しまいに倒れて救急車で病院に運ばれてしまう。結局、授賞式は欠席。当日は代わりに家族が出席し、歩が壇上で挨拶をする。
そのスピーチ内容としてゴウから渡されたメモには家族への感謝が綴られており、歩はそれを泣きながら読み、客席で聞く淑子も目に涙を浮かべていた。
後に退院したゴウは、どうしても映画館で映画がみたいとコロナ騒動の中、車椅子で勇太とともにテアトル銀幕へ。スクリーンには、銀幕スターである桂園子。その園子の目線が突然こちらに向けられ、スクリーンから飛び出して来た。
ゴウは園子に手を引かれ、スクリーンへ向かう。向こう側には、若かりし頃のゴウや仲間の姿があった。
キネマの神様《It's a Flickering Life》の見どころ|シネマじゃなくてキネマ?
「キネマ」の語源
「キネマ」の由来は、ギリシャ語のkinematos(動き)からなんだそうです。なぜいきなりギリシャ語なのかは不明。
あとシネマのシネが「死ね」を連想するなんてことも言われているらしいですが、だったら歌舞伎町のあそこは「死ねシティ広場」ってことになりますね。顔見ただけで110番してしまうで知られる小沢さんや竹内さんは、V死ねの帝王ってことですかね。
助監督とは
実際に映画撮影の現場に行ったことがありませんのでわからないんですが、映画では「助監督」ってテレビでいうとこのADみたいな感じなんでしょうか?何か扱われ方がぞんざいに見えました。
ちなみに「太陽に待ってもらえ!」とか黒澤監督へのオマージュでしょうか。
ちょっぴり古めかしい笑いのセンス
明らかな差別表現とかそんなのは無いからいいんですが、いろいろと昔っぽいです。ユーモアの感覚とか。若き日の淑子の「バカ!鈍感!」という昔っぽいセリフも、もしかしたら時代背景を考え、あえてのものかもしれません。
ゴウ役は、もともと志村さん
菅田くんと沢田さんが、どうしても同一人物に見えなかった。でもどうしたら良かったのかはわかりません。もともと志村さんがキャスティングされていたそうですが、そうなっていたらどうなっていたのでしょうか。
沢田さんがドリフバージョンの東村山音頭を歌うシーンは、ちょっと胸に迫るものがありました。ただ、永野さんと宮本さんは2人ともちゃんと淑子に見えました。ちなみに永野芽郁さんと「ゴッホより普通にラッセンが好き」の永野さんとは全然関係ないそうです。
キネマの神様《It's a Flickering Life》のキャストと予告編|Cast and Trailer
2h5m (2021)
- 円山郷直/ゴウ(酒とギャンブルに溺れた主人公):沢田研二
- 助監督時代のゴウ(監督となって自分の映画を撮るのが夢):菅田将暉
- 寺林新太郎/テラシン(ゴウの数十年来の友人):小林稔侍
- 若き日のテラシン(映写技師として自分の映画館を持つのが夢):野田洋次郎
- 円山淑子(献身的なゴウの妻):宮本信子
- 若き日の淑子(食堂の明るい看板娘):永野芽郁
- 円山歩(ゴウと淑子の娘):寺島しのぶ
- 円山勇太(歩の息子でゴウと淑子の孫):前田旺志郎
- 桂園子(往年のスター女優):北川景子
- 出水宏(映画監督):リリー・フランキー
- 森田(ゴウと意見が衝突するキャメラマン):松尾貴史
- 映画館の客(常連):片桐はいり