2019年、この国の世論調査で回答者の約8割が「死刑もやむを得ない」と。ただし、そのうち約4割は「将来的には状況次第で廃止してもよい」と答えています。
とりあえず制度の是と非に関しては、ちょっと除けておいて。普通に、死刑制度にはどうにかしなきゃならない問題点がいろいろあるのですよ。
ナントカニュースやナントカチューブのコメント欄でよく見るような、単純に「人の命奪った悪いやつは殺せ」とか言う前に、もうちょっとみんなで想像力を使いましょうという話です。
物事を多方面から考えない、脳が軽い人はちょっと黙っててって話です。
有名な日本国憲法の第36条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」。これの解釈を巡っては「死刑そのものが残虐な刑罰に該当するとは考えられない」という判決がすでに出ていますが、これ出たのは1948年です。
この国がナチ党のドイツやファシスト党のイタリアと同盟を組んでいた数年後のことです。なお今は、死刑制度の廃止がEUへの加盟条件になっているなど世界の144カ国が廃止。実に2/3。
存置国は55カ国で、中国、アメリカ(州による)、アフガニスタン、インド、イラン、イラク、北朝鮮、パキスタン、コンゴ、リビアなど、なんか失礼ながら凶暴なイメージのある国ばかり。
そもそも人を殺めるなんて頭おかしくないとできないんですから、殺人を犯した人は間違いなく脳に障害があるはず。大抵の場合、身体的または精神的な暴力を体力的に圧倒的にかなわない相手から受け続けるストレスで、脳(扁桃体だか海馬だか)が破壊されているんですね。
実際、その瞬間の記憶が本当にまったく無いなんていう殺人犯もいるわけで。だから、死刑で簡単に終わらせても何の償いにも解決にもならないんですよ。死んで詫びろって戦国時代かよ、と。
生まれつきクソな人間がいるのではなく、そうなるように追い込んだ本当の悪が隠れているんですから。
殺したから殺せというのは、ただの殺し合いです。それはもうケンカです。盗まれたから盗み返すとか騙したから騙し返すとか、小学生のような感情論です。
あと殺人を犯しても捕まらなければ死刑にならないわけで、捕まったから殺すという、その差もよくわからんです。少年だから、とか言うのもよくわからんです。それに、そんな簡単に警察も検察も信用できないというのもあります。
本物の犯人で治療が不可能ならば、ずっと閉じ込めておけばいいだけの話。税金がーとか言う人もいますが、水も安全もタダではないのです。それより先に、この国には無い「被害者や職員のケアをする制度」を何とかしようよ、と。
賛成派を集めて刑務官の代わりにボタンを押させたらどうなるでしょう。もちろん自分も、身内が被害にあえば「ブチ殺せ」とは思うでしょうが、復讐の感情と法で裁くことは別。
黒い司法 0%からの奇跡《Just Mercy》の、あらすじ|法と慣例が、無実の人間を死刑にする
1989年。ハーバード大学の法学部を卒業したブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)は、人権擁護活動を行なっているエヴァ・アンスレー(ブリー・ラーソン)とともにアラバマの州都モンゴメリーで、NPO団体・EJI〈イコール・ジャスティス・イニシアチブ/Equal Justice Initiative〉を設立。
適切な弁護を受けられない貧しい人たちのため、慣例と刑法による社会的な不正との闘いを始める。
受刑者に会うために州立刑務所を訪れたスティーブンソンは、死刑囚ウォルター・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)、通称ジョニーDと出会う。ジョニーDは1986年に18歳の白人女性ロンダ・モリソンを殺害した罪で有罪判決を受けているが、無実を主張している。
スティーブンソンが事件の証拠を調べたところ、すべてが重罪犯ラルフ・マイヤーズ(ティム・ブレイク・ネルソン)の証言のみによるものだった。マイヤーズは司法取引で刑を軽くしてもらう代わりに、検察側にウソの証言をしていたのだ。
スティーブンソンは検察官のトミー・チャップマン(レイフ・スポール)に助けを求めるが、チャップマンはスティーブンソンの資料を見ることなく拒否。
しかしスティーブンソンは、マクミリアンの家族の友人ダーネル・ヒューストン(ダレル・ブリット=ギブソン)が、マイヤーズの偽証を裏付ける証拠を持っていることを知る。
これによって検察側の主張は崩れるが、実際にヒューストンの証言を提出すると、警察はヒューストンを偽証罪で逮捕。後に偽証罪は免れたものの、街で脅迫を受けたことによりビビったヒューストンは、法廷での証言を拒否する。
そのためスティーブンソンはマイヤーズと直接対峙し、警察が「死刑になるぞ」と脅して証言を強要していたことを認めさせる。さらに、マクミリアンの再審を認めるよう地元の裁判所に訴えマイヤーズに以前のウソの証言を撤回させることに成功するが、判事は再審を否認。
そこでスティーブンソンはテレビ番組〈60ミニッツ〉に出演してメディアを利用することで支持を集め、裁判所の決定をアラバマ州最高裁判所に上訴する。
最高裁はそこで再審を認めたため、スティーブンソンは全面的に起訴を取り消してもらおうと申し立てを行う。その後の説得により、最終的にはチャップマンもこの動議に加わり、裁判官は告訴を取り下げ。マクミリアンはついに釈放され、家族と再会した。
──エピローグでは、スティーブンソンとアンスレーが現在も正義のために戦い続けていることが記されています。マクミリアンは2013年に亡くなるまでスティーブンソンと友人であり続けました。
その後の追跡調査によりマクミリアンの無実が確認され、さらには白人の犯行である可能性も出てきましたが、事件は公式には解決していません。
黒い司法 0%からの奇跡《Just Mercy》の見どころ|リアルに何かを変えたいと思ったら、粘り強く話しなきゃダメだな
1987年、そう遠くない昔に実際にあった話
いやーこれはひどいですね、こんなムチャクチャがまかり通ろうとしていたとは。1964年に公民権法成立してから23年後の1987年の出来事で、今から見てもそう遠い昔ではない話ですよ。
ただ何が常識かは、個々人はもちろん州によっても国によっても変わります。
カリフォルニア州1つだけで日本よりも広い国なので「洗って色落ちして縮んじゃったからこのドレス返金します」ができる国だというのが理解できない反面、あちらからすれば日本の就職における年齢差別は理解できないでしょう。80代で飛行機の客室乗務員や100歳オーバーのスーパー店員がいるらしいので。
使用されている音楽の、選曲の意図がわかりませんでした
Martha Reeves & The Vandellas の "Ode to Billie Joe" や Alabama Shakes の "Don't Wanna Fight" など、時代感の無い選曲の意図が、日本人の私にはわかりませんでした。
絶望は、正義の敵
ともあれ、リアルに何かを変えたいと思ったら粘り強く話しなきゃダメだと学びました、自分はすぐ「まぁいいや」ってなっちゃうので。"I now know that hopelessness is the enemy of justice" 「絶望は正義の敵だ」。
黒い司法 0%からの奇跡《Just Mercy》のキャストと予告編|Cast and Trailer
◎2h17m (2019)
- ブライアン・スティーブンソン(若くて賢くて勇気と頼りがいがあって信念に満ち溢れた実在の弁護士):マイケル・B・ジョーダン
- ウォルター・マクミリアン(やってないことで罪に問われ、死刑宣告を受けた人):ジェイミー・フォックス
- エヴァ・アンスレー(スティーブンソンをサポートする力強い味方):ブリー・ラーソン
- ラルフ・マイヤーズ(ウソの証言を撤回した勇気ある人):ティム・ブレイク・ネルソン
- トミー・チャップマン(悪役の検察官だが、最後に改心する):レイフ・スポール
- ダーネル・ヒューストン(マクミリアンの家族の友人で重要な証人だったが…):ダレル・ブリット=ギブソン