安藤サクラさんの「百円の恋」、クリント・イーストウッド監督の「ミリオンダラー・ベイビー」、ゆりやんレトリィバァさんや唐田えりかさんなどが熱演した「極悪女王」、そして本作。
近年のポリコレ的空気の影響もあると思いますが、これらの映像作品を通じて女性格闘家がとにかく本当にカッコよく感じるようになりました。
で、この映画のケイコさんは、生まれつき聴覚に障害のあった元プロボクサーの小笠原恵子さんがモデルです。
《ケイコ 目を澄ませて》の、あらすじ|聴覚障害を持ったプロボクサー
小河ケイコは先天性の聴覚障害を持つ女性で、東京の下町にあるボクシングジムに通い、プロボクサーとしての道を歩んでいる。日々の厳しいトレーニングを重ねて、とうとうプロ試験に合格。デビュー戦では勝利を収めた。
物語は、ケイコが毎朝早く起きて10kmのロードワークをこなし、その後にホテルで清掃の仕事をし、ジムで練習するという生活から始まる。彼女は弟と同居しており、時には彼に冷たい態度をとることもあるが、心の中では家族への愛情が存在していた。
試合の日、ケイコは母親が観戦に来る中で試合に臨む。数回パンチを受けながらも勝利を収めるが、母の反応や周囲の期待に対するプレッシャーが次第に彼女を悩ませるようになっていた。母親から「いつまで続けるつもりなの?」と問われ、ケイコはボクシングを続けるかどうか葛藤し始める。
ある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る。この知らせは彼女に大きな衝撃を与え、その心の中で何かが動き出した。彼女は会長宛てに「一度、お休みしたいです」と書いた手紙をずっと出せずにいたが、この状況が彼女の決断を促したのだった。
再び試合の日が訪れるが、今回は相手選手との接触でダウンを取られ、その後もリズムを崩してしまい敗北。試合後ジムは閉鎖され、ケイコのところには、その記念写真が送られてくる。
物語はケイコの成長だけでなく、彼女を支える人々との関係や東京という街の変化も描き出す。聴覚障害という特性は彼女の人生に影響を与えるが、それ以上に彼女自身の人間性や努力が強調されている。最終的にケイコは自分自身と向き合いながら、また新たな道を模索していく。
《ケイコ 目を澄ませて》の、観る前に知っておきたい知識と見どころ|元世界王者、白井義男は荒川区の出身です
ボクシングにおけるコンビネーションミット
ボクシングのコンビネーションミットは、ボクサーの技術向上に欠かせない重要なトレーニング方法。俳優がボクサーを演じるにあたっては、みんなそれなりに練習しているものと思います。でも時々、素人目に見ても下手な人はいる。そんな中、岸井さんは相当練習されたんだろうなぁ、というレベルで迫力が違いました。
コンビネーションミットとは、ミットを持ったトレーナーと対峙して選手がいろんなパンチを連続して打つ練習方法です。ワンツー(ジャブ+ストレート)やワンツースリー(ジャブ+ストレート+フック)にボディ攻撃を含ませるなど、パンチのスピードと正確さとタイミング、リズムを実戦的な動きの中で磨きます。
TVerのお気に入り登録
鏡に向かって泣きながら会長と一緒にシャドウ(シャドーボクシング、野球やテニスなどでやる素振りみたいなやつ)をするシーンは、実に美しい場面です。
数々のドラマや映画に多数出演する岸井さんの芝居、なんだかすごく物語に引き込まれます。だからTVerのお気に入りに俳優として登録しています。
映画は映画、原作は原作
映画は、実在のプロボクサー小笠原恵子さんの自伝『負けないで!』を原作としています。
映画版ではケイコの内面や感情が、岸井さんの芝居を通し言葉ではなく行動や表情で表現されています。あと会長の健康上の理由でジムが閉鎖されることが重要な出来事として描かれていますが、これも実話なんですかね。
ちなみにケイコが試合に負けるシーンは物語上必要だったかもしれませんが、ホンモノの小笠原さんは無敗のままリングを降りています。
エンディングに興奮
音楽ナシ、まったくの無音で荒川区の風景を映すだけのエンディングが、めちゃくちゃいいです。これホントいいです。タイアップのJ-pop流されるとまったくもって萎えるし、音を無くしたのは聴覚障害の何かを表したのかもしれませんが、とにかく興奮しました。あと、これまで圧倒的な山の手派として生きてきましたが、下町もちょっといいなと思ったのでした。
ちなみに、日本から初めて出たボクシングの世界チャンピオン白井義男氏は、荒川区出身です。
その他のうんちく
- 監督は三宅唱氏です。鳥はうたえる(ビートルズの楽曲 And your bird can sing の直訳)の監督で、言われてみれば匂いが似ています。
- 弟役で浅野忠信・CHARA夫妻の長男である佐藤緋美さんが出ていました。最近よくお見かけしますね。
《ケイコ 目を澄ませて》の、キャストと予告編|Cast and Trailer
◎2h10m (2015)
- 小河ケイコ(主人公、聴覚障害を持つプロボクサー):岸井ゆきの
- ケイコの弟(姉と一緒に暮らしている):佐藤緋美
- 母親(ケイコがボクシングをしていることが心配):中島ひろ子
- 会長(荒川ボクシングジムの会長、体調が思わしくなくジムを閉鎖する決心をする):三浦友和