この映画は、2000年代、亀田兄弟やSMAPが現役だった頃に公開された "Deep Blue" とか "Earth" のような「地球スゴイ」的なドキュメンタリーです。カテゴリーで分けると。ただし、このダサい邦題が表すとおり、メインキャストは山そのものよりもそれに魅せられる人間となっています。
なお、上映時間は1時間ちょいと通常の映画たちの中では短い方であり、例えると羽田から新千歳までのフライトの間で観終えることができるくらいの長さの作品です。
クレイジー・フォー・マウンテン《Mountain》の、あらすじ|壮大な山岳の映像と音楽のコラボレーション
ドキュメンタリーなので、いわゆるストーリーというストーリーはありません。言うなれば、ジェニファー・ピードム監督とオーストラリア室内管弦楽団(ACO/Australian Chamber Orchestra)による「映画と音楽のコラボ」です。
ヴィヴァルディやショパン、グリーグ、ベートーヴェンなどの耳慣れた楽曲が使われているのですが、正直、音楽の使い方がイマイチと言うか合ってなくない?と言うか。
ここだけの話、はっきり言えば音がうるさかったです。普通に自然の音が聞きたかった。
加えて、合間合間に「深いっすねえ」と言いたくなるような内容のナレーションが入ります。「300年くらい前まで危険で神々しい存在であり、入っていくことはタブーと考えられていた『山』。なぜ、時には命を犠牲にするほどまでに人を魅了するのか…」というような。
まぁそれに対する明確な答えはないので、この映像と音楽を体験して、それぞれが何かを感じてください……というテーマかなと個人的には思います。
クレイジー・フォー・マウンテン《Mountain》の見どころ|山と向き合うことで悟る、自分の生と死
これもおそらく依存症の一種
昔は自分も山に登っていた時期がありました。なので山の魅力の片鱗くらいは知っているつもりですが、ここに登場する人たちの生きざまは私のようなヌルいもんじゃないです。レベル違い略してレベチです。
凍傷で指を切断してしまっても崖を登るような人たちです。何日もかけて登る場合、垂直の崖にぶら下がったテントの中で寝るような人たちです。
そして、スキーや自転車(マウンテンバイク)のシーンは滑っているというよりむしろ落ちているような感じであり、最終的に転げ落ちたり雪崩に巻き込まれたりする場面も出てくるので、昔あった「ザ・ショックス」や「ジャンク」ほどではないけど、ちょっと怖いところもあります。
危険なところに身を置くことで生きている実感を得る
冒頭から、ベアハンズクライマー(Barehanded Climber、素手で登る人)であるアレックス・オノルド(Alex Honnold)が登場。ザイルなどの道具を使わずに、ほとんど手や足をかける場所がなくマカオバンジー何個分ってくらいの高さの垂直な崖を登っています。
こんなの法律で許されているのでしょうか、許していいのでしょうか。こんな調子で、見ているこっちの身体がすくむような映像がちょいちょい流れ、おかげで緊張から鑑賞後なんか疲れました。
危険なところに身を置くことで生きている実感を得るなんて、自傷行為に近いというか、これたぶん脳内麻薬ですね。エンドルフィンとかドーパミン的な。山中毒ってのもありそうです。
大きいものに対して人間は畏怖の念を抱く
山には宗教的な意味合いも感じますね。仏像なんかを見ればわかるかと思いますが、とてつもなく大きいものに対して人間は畏怖の念を抱くもので、山もまた然りで。
人生において自分の力ではもうどうしようもないことを受け入れたり、謙虚になれたりという宗教的な体験を、山と向き合うことで得られるような気がします。実際に、昔の人たちって宗教的な建造物を山の中に作りがちなイメージ。
山は、ちょっと哲学的な岩の塊。当社比ですが読書好きと山好きはちょっとシンクロするように思います。
ウィングスーツってどうなっているんだろうか
空を飛ぶコウモリみたいなウィングスーツってやつ、こんなんでホントに空飛べたりするんでしょうか。CGだったりしないでしょうか。
クレイジー・フォー・マウンテン《Mountain》のキャストと予告編|Cast and Trailer
◎1h13m (2017)
- ウィレム・デフォー(哲学的な内容をナレーションする人。同姓同名とかじゃなくて、あの名優本人)
- アレックス・オノルド(素手で壁を登るフリークライマー)
- コンラッド・アンカー(登山家。「そこにエベレストがあるから <Because it's there.>」の名言を残した伝説の登山家、ジョージ・マロリーの遺体を発見した人。)
- ジミー・チン(登山写真家)
- トミー・コールドウェル(ロッククライマー)
- ──その他、多数のクレイジーなアスリートたち