2009年に29歳で自ら命を絶った女優、チャン・ジャヨンの事件をモデルにした映画。
原題の『ノリゲ』とは韓国の伝統服であるチマチョゴリにつける装飾品なんですが、彼女の残した手紙には「何人にノリゲ(おもちゃ)にされたかと考えると、すべてが長い長い悪夢であってくれたらと思う」と、おもちゃの意味で使われていて、これをタイトルにしたのでしょう。
グロマンガやスリラー映画のような出来事ですが、どうやら地球上のいたるところで行われている性接待という鬼畜の所業。できることなら地球から引っ越ししたい気分。金と権力を持ったら、みんなこんな外道になるのでしょうか。
玩具(おもちゃ)~虐げられる女たち~《Norigae》の、あらすじ|枕営業の被害者と加害者たち
新人女優のチョン・ジヒが、薬物の過剰摂取による自殺で亡くなった。その背後には、事務所仲介による有力者への枕営業といった黒い噂があった。ネットメディアの記者であるイ・ジャンホは、真実を明らかにするとカメラの前で宣言する。
初公判の日。検事のキム・ミヒョンにとっても初めての裁判だった。
そこでキム検事は、映画監督のチェ・チョルスによる強制わいせつ罪、所属事務所のチャ・ジョンヒョク社長による性接待指示の強要罪、酒席に同席していた韓国新聞の会長ヒョン・ソンボンによる強要罪ほう助と、次々に告訴する。
しかし弁護側は「チェ監督は身体に手が当たってしまっただけ、チャ社長も恐喝はしておらず、ヒョン会長も酒席に同席はしていたが、性接待のことは知らなかった」と反論。
2回め以降の審理では、社会的なスキャンダルや自己の保身を懸念して事件を収めようとする者と、良心に耐えられず知っている事実を語る者とが交錯し、キム検事の奔走も合わせて裁判の行く先は見えなくなってゆく。
はじめに証言台に座ったジャンホ記者は、ジヒの死後、自分の元に偽名で届いた性接待の証拠書類を出す。それはジヒが死亡の直前にチャ社長に送ったメールであり、接待の詳細をすべて記録した手帳を警察に持ち込むと書かれていた。しかし、その肝心の手帳はまだ見つかっていなかった。
次に、酒席に使われたクラブのママは証言した内容を忘れてしまったと発言。チェ監督もかなり酔っていて、ジヒが身体を触られていたかはわからないと言う。
続いて、事務所のスタイリスト。ある撮影に同行したとき、脚本が変わったと急なベッドシーンを強要されたジヒは、制作側と口論になったと証言。
ジャンホ記者はジヒのマネージャーにも聞き取りを行なった。遺体の第一発見者とのことだったが、手帳がどこにあるかは知らないと言う。
後日、今度はクラブのホステスが証言台に。ホステスは「その日、被害者(ジヒ)を初めて見たが、高慢で拗ねたような感じだった」と言った。弁護側は「店にただ連れてきただけだ」と言い、検察側は「被害者が望まない酒席だったのは明らかだ」と主張した。
そして、しばらく連絡のつかなかったジヒの女優仲間、コ・ダリョンが証言台に座り、とある晩の酒席に呼ばれたときの話をした。そのときジヒはヒョン会長に対し狂ったように自分の名前を連呼していた、と。一人の女優として、人間として扱ってくれという叫びだったのだろう。
しかしチャ社長は「なぜお前がでしゃばるんだ」とジヒを激しく殴りつけた。その後、廊下を歩いていたダリョンが声のする別室を覗くと、ジヒがヒョン会長を相手に性接待をさせられていた。
だが口外すると女優を続けられなくなるという恐怖から、ダリョンはこれまで何も語れなかったのだった。泣きながら謝罪の言葉を口にするダリョン。
ついにマネージャーは、ジヒの手帳をジャンホ記者に送る。そこには、ジヒがチャ社長に性接待を強要され続けていて、その相手は芸能関係者だけでなく政治家や検察など多岐にわたっていたことが記されていた。ジャンホ記者の報道によって、世間は大騒ぎとなった。
裁判長とユン弁護士は、キム検事と話し合っていた。キム検事の父は最高裁判所の判事であり、ユン弁護士とは友人関係にあった。ユン弁護士はキム検事の過去の事件と父のキャリアへの影響を理由に、裁判から外れた方がいいと主張する。
しかしキム検事は「それと本件とは関係ない、自分は決して引き下がらない」と宣言したのであった。最後の法廷でキム検事は、新しい証拠としてジヒの手帳を提出した。スクリーンにジヒの字で書かれた性接待の詳細が映し出され、騒然とする法廷。
焦った裁判長は映像を消すように指示し、騒ぎ出した傍聴人を全て退廷させる。
キム検事の「まだ終わっていない」という叫びは無視された。
人々が真実を糾明しろと抗議運動をするなか、裁判の判決がくだされた。
玩具(おもちゃ)~虐げられる女たち~《Norigae》の見どころ|この狂った連中は、まだ地球上にいるのです。確実に。
女性俳優の62.8%が「性」接待を提案された経験がある
この映画は実話に基づいています。だからフィクションのようなスカッとした終わりではなく、本作の結末は非常に胸糞悪いです。
まだ事件は記憶に新しく、内容が内容だけに十分な出資を受けられなかったため、製作費はクラウドファンディングによって集められました。なお女性俳優の45.3%が「酒」接待を求められた経験があって、62.8%が「性」接待を提案された経験があるとのこと。
世界の性加害事件
旧ジャニーズ問題、聖職者による児童への性的虐待事件、プチエンジェル事件、エプスタイン島事件、イギリス王室の児童人身売買……。
タイトル「ノリゲ」の意味
原題および英題の読み方は、ノリゲ。韓国のなんか伝統的なストラップっぽい形をした装飾品で、冒頭に書いたとおり被害者の手紙におもちゃの意で書かれていたのがタイトルになった、と。
なぜ装飾具がおもちゃなのかとか詳細はちょっとわからなかったです。
海外の人の名前を覚えるのは難しい
韓国の人の名前はわかりづらくて覚えながら見るのが大変ですが、他国の人からしたら日本人名を覚えながら日本の映画を観るのにも苦戦しているのでしょうね。
国と国の壁を作るのは各国の日常で食べている食事だと思っていたけど、名前の覚えにくさにも何か秘密がありそうだ。
ジャンホ記者(マ・ドンソク)の、おもしろい嫌がらせ
証拠となる手帳のありかを聞き出すため、釣りをしている検事を訪ねるジャンホ記者(マ・ドンソク)。暴力などで脅すんじゃなくて、湖面に石を投げて釣りの邪魔をするというのが何かジワジワきます。
緊張感が続くストーリーのなか、一服の清涼剤と言えましょう。
玩具(おもちゃ)~虐げられる女たち~《Norigae》のキャストと予告編|Cast and Trailer
◎1h40m (2013)
- イ・ジャンホ(ジャーナリスト。事件の真相究明に奔走する):マ・ドンソク
- チョン・ジヒ(性接待被害者の女優。薬を大量に服用して自殺)
- コ・ダリョン(被害者のジヒと同じ事務所に所属する女優仲間。内情を告発する)
- キム・ミヒョン(実力は不足しているが正義感あふれる検事)
- チャ・ジョンヒョク(被告人、芸能事務所社長。外道1)
- チェ・チョルス(被告人、映画監督。外道2)
- ヒョン・ソンボン(被告人、韓国新聞会長。外道3)
- ユン・キナム(弁護士、悪党の味方)