登場する「アーミッシュ」とは、主にアメリカとカナダに住むキリスト教徒の保守的な集団。17世紀にヨーロッパから移住したドイツ系の人々が起源で、自動車や電気といった現代文明の使用を避け、馬車で移動したり手作業で農業を行います。
まぁ暴力を否定する平和的な人たちで害はないし、主義も間違ってはいないとは思うんですが、やはりカルトな匂いはどうしてもあるんですよね。
そんな別世界の人たちと、ちょっとだけ一瞬、だけど深いところで交わることになった男の物語です。
ちなみにハリソン・フォードは、刑事ジョン・ブックですが目撃者ではありません。
刑事ジョン・ブック 目撃者《Witness》の、あらすじ|現代の都会と平和な村、二つの世界が交錯する事件
ペンシルベニア州ランカスター郊外にあるアーミッシュのコミュニティに住む母レイチェルと息子サミュエルの親子が、レイチェルの妹(サミュエルにとってはおばさん)を訪ねるため列車でフィラデルフィアへ向かった。
30丁目駅で乗り換えの列車を待つ間に入った男子トイレの個室でサミュエルは、トイレの手を洗うところで男が殺害される現場を目撃する。思わず声が漏れて見つかりそうになるが、隣の個室に逃げ込んで難を逃れた。
この事件は、ジョン・ブック警部と相棒のエルトン・カーター巡査部長が担当することになった。彼らはサミュエルに聞き込みを行うが、なかなか犯人候補のラインナップの中にトイレにいた犯人を見つけることができない。
ブック警部の電話中、退屈になったサミュエルは、署内のトロフィーケースの中にあった麻薬取締官ジェームズ・マクフィー警部補の新聞の切り抜きを見て、彼が犯人だとブックに指摘する。
ブックはマクフィー警部補を調べ、彼が以前にブラックマーケットのアンフェタミン製造に使われる高価な化学薬品の押収を担当し、その後その化学薬品が無くなったことを突き止めた。ブックは、マクフィー警部補は化学薬品を麻薬の売人に売り戻していたのではないか、と推測する。
ブックはそのことをポール・シェーファー警察署長に告げるが、署長は今後の方針を決めるために事件を秘密にするようブックに命じる。しかしその直後、ブックはアパートの駐車場でマクフィーに待ち伏せされ、撃たれて負傷する。
ブックがマクフィーを疑っていることを知っていたのはシェーファー署長だけだったため、ブックはシェーファーもグルに違いないと気づく。
サミュエルとレイチェル親子が危険だと気付いたブックは、カーター巡査部長にレイチェルとサミュエルに関するファイルを隠すよう頼み、2人を農場に送り届けた。そしてフィラデルフィアに戻ろうとするが、ブックはマクフィーに撃たれた傷のために気を失い鳥小屋の柱に激突する。
レイチェルは彼を病院に連れて行くようとするが、ブックは拒否。病院へ行けば連中に見つかってしまい、レイチェルとサミュエルが再び危険にさらされることになる、と。レイチェルの義父であるイーライは、しぶしぶ彼を保護することに同意した。
ブックは彼らの世話で徐々に回復し、アーミッシュのコミュニティとライフスタイルに溶け込み始める。そして彼とレイチェルは互いに好意を抱くようになるが、ダニエル・ホッフライトナー(レイチェルの夫の死後、求婚しようとしていた隣人)にとって軋轢の種となる。
しかしブックは大工仕事に長けており、まじめで勤勉であることからコミュニティとの信頼関係も深まっていく。
一方、シェーファー警察署長はアーミッシュ地域の当局に連絡を取りながらブックの行方を追う。しかしアーミッシュのコミュニティには電話などの現代的な通信手段がなく、外界との接触もほとんどないため行き詰まっていた。
義父のイーライと所要で町に出た際に、公衆電話を使って署に電話をかけたブックは、カーターが殺されたことを知った。ブックはシェーファーが黒幕だと確信し、彼の自宅(警察署と違い逆探知ができない)に電話をかけ、腐敗している彼を非難し殺すと脅す。
町に戻ると、若者がアーミッシュを面白がりちょっかいをかけていた。ブックはアーミッシュの伝統である非暴力を破って報復。しかし、この暴行は地元警察に通報され、やがてシェーファーにもこの件が伝わってしまう。
レイチェルは野原でブックに近づいていき、ついに2人は情熱的に抱き合う。しかし直後、シェーファー、マクフィー、そしてもう一人の汚職警官、レオン・"ファーギー"・ファーガソン巡査部長がラップ農場に到着し、レイチェルとイーライを人質に取る。
ブックはサミュエルにホッフライトナーの農場に隠れるように伝え、自分はまずファーギーを騙しトウモロコシ貯蔵庫に連れ込んで大量のトウモロコシの下で窒息死させる。次にファーギーのショットガンを使い、マクフィーを射殺。
シェーファーはレイチェルとイーライを人質に銃を突きつけるが、その時サミュエルが鐘を鳴らした。鐘は近隣住民全員を呼び出し、多くの目撃者の前でシェーファーは逮捕される。
レイチェルとサミュエルは危険から解放され、ブックは2人と村の人たちに別れを告げてフィラデルフィアへ帰っていった。
刑事ジョン・ブック 目撃者《Witness》の、観る前に知っておきたい知識と見どころ|アーミッシュは現在も健在
アーミッシュについて
結構昔に観た作品ですが、この映画でアーミッシュを知りました。アーミッシュというのは、アメリカの田舎に住み「信仰、家族、シンプル」という独特のライフスタイルで知られる伝統的なキリスト教コミュニティ。ドイツからアメリカに入植してきた人を起源とし、Ordnung(オルドヌング、ドイツ語で「秩序、規律、順序、整理整頓」という意味)に従って生活しています。
彼らは現代世界からの分離を強調し、ほとんどの技術的利便性を拒否しています。服装はシンプルで、男性はつばの広い黒い帽子とダークスーツとあごひげ、女性はロングドレス、ボンネットを着用し、髪も切りません。
日本のマイルドヤンキーのように家族大事、仲間大事って感じで、子どもは7〜10人いる大家族が多く、複数の世代が一緒に暮らします。また、コミュニティ全体が協力して家族が建物を建てるのを手伝ったりします。
経済的には主に農業と技術職。ほとんどの食料を自家栽培し、キルト、バスケット、焼き菓子などの手作り製品を販売しています。そして宗教的慣習には、成人の洗礼、家庭での礼拝、平和主義と謙虚さへの強いこだわりなどがあります。日本人がイメージするカルトみたいに攻撃的な面は無いので、まぁそっとしておいてあげようという感じなんですが、自由が無いのはなんだか可哀想に思えてしまう。
アーミッシュはクルマを持たない
アーミッシュはクルマに「乗る」ことはあっても、自動車を「所有」しません。彼らは主に馬車を移動手段として使用します。
個人主義や虚栄心を抑制するためとのことですが、馬車にはランクとかないんでしょうか。それより馬車で道路をノロノロ走ってて後ろが大渋滞を起こしているシーンで笑いました。
アーミッシュの村は、観光地化している
特にインディアナ州のシプシェワナやペンシルベニア州のランカスター郡などでは、多くの観光客を受け入れています。
これらの地域では、アーミッシュの伝統的な生活様式を体験できるツアーや手作りの家具、キルト、チーズ、ジャムなどの商品を販売する土産店が人気を集めています。また、アーミッシュの人たちが運転する馬車に乗って村を巡るツアーなどもあります。
観光地化ってなんだか違和感があるけど、大切な現金収入となっているのでしょうね。
♫ Wonderful World
ジョン・ブックとレイチェルが踊るシーンで流れる「Wonderful World」ですが、オリジナルのサム・クックのバージョンが使用できなかったため、地元のセッションミュージシャンであるグレッグ・チャップマンが映画用に起用されたらしいです。
刑事ジョン・ブック 目撃者《Witness》の、キャストと予告編|Cast and Trailer
◎1h53m (1985)
- レイチェル(アーミッシュでサミュエルの母。未亡人。ブックといい感じになる):ケリー・マクギリス
- サミュエル(殺人事件の目撃者、6歳):ルーカス・ハース
- ジョン・ブック警部(主人公、アーミッシュに溶け込みつつ母子を守る):ハリソン・フォード
- エルトン・カーター巡査部長(途中で殺されてしまうジョン・ブックの相棒):ブレント・ジェニングス
- ジェームズ・マクフィー警部補(麻薬取締官でありながら殺人犯):ダニー・グローヴァー
- ポール・シェーファー警察署長(悪徳署長):ジョセフ・ソマー
- イーライ(ちょい堅物なレイチェルの義父):ヤン・ルーベス
- ダニエル・ホッフライトナー(レイチェルの夫の死後、彼女に求婚しようとしていた、ぱっとしない隣人):アレクサンドル・ゴドゥノフ
- レオン・"ファーギー"・ファーガソン巡査部長(もう一人の汚職警官):アンガス・マッキネス